9月28日、Chainlinkがチェーン間の仕組みCCIPChainlinkのクロスチェーン相互運用プロトコルの新版「CCIPChainlinkのクロスチェーン相互運用プロトコル 2.0」の稼働を始めた1。目玉は、発行体が自分で選んだ検証者を、Chainlinkの検証に上乗せできるようにしたことだ。
④では、LayerZeroのDVNLayerZeroでチェーン間メッセージの真正性を確認する検証者を日本企業が担えば、日本の発行体は契約で向き合える国内の相手を検証の中に置ける、と書いた。誰が検証し、誰が責任を持つのかという問いは、CCIPChainlinkのクロスチェーン相互運用プロトコル 2.0で、LayerZeroとChainlinkの競争の中心になった。この記事では、日本の金融機関の側から、二つの仕組みを比べる。
日本の金融機関が求めるもの
LayerZeroやCCIPChainlinkのクロスチェーン相互運用プロトコルのような仕組みでは、送り元のチェーンで起きたことを、外にいる検証者が確かめて署名し、送り先のチェーンはその署名を見て資産を発行する。発行体にとって検証者は、自社の資産の安全を左右する外部の事業者にあたる。
日本の金融機関が外部の事業者を使うときの目安になるのは、金融庁が2024年10月に出したサイバーセキュリティのガイドラインだ2。まず契約について、外部の事業者との契約に、役割分担と責任分界、監査の権限、事故が起きたときの対応と報告、契約が終わるときの取り決めなどを明記するよう求めている。次に権限について、強い権限を持つアカウントは、操作の二重の確認などで厳しく管理するよう求める。さらに、外部の事業者への集中や地政学的なリスクを考え、重要な事業者が撤退したり止まったりしたときの代替手段と出口戦略を、前もって用意しておくことが望ましいとしている2。
当局は、金融機関の外部委託先にも報告を求めたり、立ち入って検査したりする権限を持つ2。契約の言葉や準拠法、事故のときの連絡、当局の検査まで考えると、国内の相手のほうが向き合いやすい。
CCIP 2.0の場合
CCIPChainlinkのクロスチェーン相互運用プロトコルでは、検証をChainlinkのネットワークが担う。既定の検証者は、Chainlinkが審査した16の独立した運用者からなり1、すべてのメッセージを確認する3。顔ぶれはChainlinkが決める。
CCIPChainlinkのクロスチェーン相互運用プロトコル 2.0では、これに発行体が選ぶCCVCross-Chain Verifier。CCIP 2.0で、発行体がChainlinkの検証に上乗せして選べる検証者を足せる。発行体はAWSやGoogle Cloudの上で自らCCVCross-Chain Verifier。CCIP 2.0で、発行体がChainlinkの検証に上乗せして選べる検証者を動かすこともでき、インドのITサービス大手Infosysや、Nethermind、Further Asset Managementといった事業者が、顧客に代わってCCVCross-Chain Verifier。CCIP 2.0で、発行体がChainlinkの検証に上乗せして選べる検証者を運用する1。トークンやメッセージの移転は、既定の検証者と足したCCVCross-Chain Verifier。CCIP 2.0で、発行体がChainlinkの検証に上乗せして選べる検証者の両方が署名して初めて実行される。CCVCross-Chain Verifier。CCIP 2.0で、発行体がChainlinkの検証に上乗せして選べる検証者は多重の守りであって、既定の検証者を置き換えるものではないとされる1,3。あわせて、ChainlinkのACEAutomated Compliance Engine。本人確認の状態や取引の上限などのルールを、スマートコントラクトで自動的にかけるChainlinkの仕組みと組み合わせ、本人確認の状態や取引の上限といったルールを、移転ごとにかけられる1。
Chainlinkは、この既定の検証を、チェーン間の安全の専門家でなくても得られる安全の下限と位置づけている4。発行体が検証者を選び損ねても、検証が一つだけになることはない。ただし、構成の責任までChainlinkが引き受けるわけではない。Chainlinkの文書は、CCIPChainlinkのクロスチェーン相互運用プロトコルの利用は参加者が責任を分け合うものだとし、足したCCVCross-Chain Verifier。CCIP 2.0で、発行体がChainlinkの検証に上乗せして選べる検証者の評価や設定、監視は開発者の責任としている5。国内の事業者をCCVCross-Chain Verifier。CCIP 2.0で、発行体がChainlinkの検証に上乗せして選べる検証者として加えることはできるが、それはChainlinkの16社に重ねる形になる。金融機関から見れば、Chainlinkも、検証を担う外部の事業者の一つとして、役割と責任の分け方を整理しておく相手になる。
日本の金融グループでは、SBIグループのデジタル資産部門SBI Digital Marketsが2025年11月、CCIPChainlinkのクロスチェーン相互運用プロトコルをチェーン間の唯一の仕組みとして採用しており6、今回のCCIPChainlinkのクロスチェーン相互運用プロトコル 2.0の発表でも、採用例として紹介された1。
LayerZero V2の場合
LayerZeroは2024年のV2から、検証者の組み合わせそのものを発行体に委ねてきた。DVNLayerZeroでチェーン間メッセージの真正性を確認する検証者は誰でも立てられ7、公開されている一覧には、GoogleやDeutsche Telekomのような大手から発行体自身まで、数十の運用者が並ぶ8。発行体はその中から、どのDVNLayerZeroでチェーン間メッセージの真正性を確認する検証者を使い、何社の署名で移転を通すかを決める。LayerZero Labs自身のDVNLayerZeroでチェーン間メッセージの真正性を確認する検証者を使うかどうかも、発行体が選ぶ。
一覧には、ChainlinkのCCIPChainlinkのクロスチェーン相互運用プロトコルも入っている。CCIPChainlinkのクロスチェーン相互運用プロトコルを通じて検証するDVNLayerZeroでチェーン間メッセージの真正性を確認する検証者で、Ethereum、Avalanche、BNB Chainで使える8。LayerZeroの上では、Chainlinkの検証を加えることも外すこともできる。日本企業がDVNLayerZeroでチェーン間メッセージの真正性を確認する検証者を立てれば、国内の事業者を加えることも、国内の事業者だけで組むこともできる。
組み合わせの責任を発行体が負う点は、CCIPChainlinkのクロスチェーン相互運用プロトコルと同じだ。違うのは、提供元の検証が必ず加わるという下支えがないことだ。4月のKelp DAOの件では、検証を一つのDVNLayerZeroでチェーン間メッセージの真正性を確認する検証者に任せていたところを突かれた(④)。LayerZeroはその後、既定の構成を3者以上の検証に改めた9が、組み合わせを選べる以上、どこまで重ねるかは発行体が決める。
LayerZeroは、発行体の運用の手間を減らし、金融機関の社内の決まりにも合わせやすくする製品として、発行体向けの運用基盤Consoleを年内に提供する予定だ10。トークンの設定の管理と新しいチェーンへの展開、設定の監視とセキュリティ上の推奨、異常の通知、権限とアクセスの管理、社内ルールの強制、請求までを一つにまとめる11。構成への推奨は、発行体が検証者を選ぶ負担を軽くする。権限の管理はガイドラインの求める二重の確認に、請求の機能はLayerZero Labsを契約の相手とする道につながりうる。どこまで応えるかは、提供が始まってから見えてくる。
両者の比較
| 項目 | CCIP 2.0 | LayerZero V2 |
|---|---|---|
| デフォルト設定 | Chainlinkの16社が全件を確認 | 3者以上のDVNで確認(発行体が変更できる) |
| 追加の検証者 | CCV(自社運用か委託) | DVN(自社運用か、数十社から選択) |
| 運営元自身の検証 | 原則加わる | 選択可能 |
| 国内の事業者だけで組めるか | 16社に重ねる形になる | 組める(国内のDVNがあれば) |
| 構成の責任 | 発行体 | 発行体 |
| 付随する機能 | ACE | Console(年内予定) |
| 国内金融機関の採用 | SBI Digital Markets | 公表例なし |
収斂進化
二つの仕組みは、反対の側から同じ場所に近づいている。CCIPChainlinkのクロスチェーン相互運用プロトコルは、外さない土台の上に選択肢を足した。LayerZeroは選択肢から始め、Kelpの件の後に既定を引き上げ、Consoleで運用を支えようとしている。それでも違いは残る。提供元の検証が必ず加わるか、検証者の組み合わせを発行体が全部決めるか、だ。
どちらが合うかは、日本の中でも分かれる。SBIグループのように、すでにChainlinkと深く組んだ金融グループには、CCIPChainlinkのクロスチェーン相互運用プロトコル 2.0は自然な延長になる。一方、③と④で見たJPYCのような、銀行系の基盤の外にいる発行体には、LayerZeroの特徴が効く。Kelpの件の後も、米国の銀行Anchorage Digitalや、韓国でウォン建てのKRW1を出すBDACSは、LayerZeroを選んだ(①、④)。KRW1が載るEthereum、Polygon、Avalancheには、JPYCも載っている(④)。検証者を一つずつ入れ替えられる設計は、ガイドラインが求める代替手段や出口戦略の考え方とも重なる。
CCIPChainlinkのクロスチェーン相互運用プロトコル 2.0で、発行体が検証者を選べることは、LayerZeroだけの特徴ではなくなった。ただそれは、LayerZeroが2024年から取ってきた設計が、チェーン間の仕組みの標準になりつつあるということでもある。国内のシステム会社や通信会社が検証を担う道は、両方の側に開いた。それでも、LayerZeroの日本での入り口が、③と④で見た、銀行系の基盤の外にいる発行体にあることは変わらない。特定の金融グループや提供元に縛られず、検証者を自分で選び、組み替えられる自由が最も生きるのは、そうした発行体だからだ。