今さらながら一つの疑問が生まれた。

LayerZero、CCIPChainlinkのクロスチェーン相互運用プロトコル、Wormhole、Axelar、Hyperlane。ブロックチェーンの相互運用を実現するために複数のプロトコルが開発されているが、これらのプロトコル同士は相互運用できるのだろうか。

調べてみると、必ずしもそうではない。

2026年9月、この問題を扱った研究論文が公開された。「XIR: A Framework for Interoperability across Cross-Chain Protocols Based on a Verifiable Intermediate Representation」1。

異なる相互運用プロトコルを組み合わせ、ブロックチェーン間の通信を実現する仕組みを提案した研究だ。

相互運用プロトコル同士はつながらない?

LayerZero、CCIPChainlinkのクロスチェーン相互運用プロトコル、Wormholeなどは、それぞれ異なる仕組みでクロスチェーンメッセージを検証している。

LayerZeroではDVNLayerZeroでチェーン間メッセージの真正性を確認する検証者、CCIPChainlinkのクロスチェーン相互運用プロトコルではDON、WormholeではGuardianが検証に関わる。メッセージ形式や検証方法なども統一されていない。

例えば、次のような接続が存在したとする。

Chain A — LayerZero — Chain B — Hyperlane — Chain C

Chain AからBへはLayerZeroで通信できる。BからCへはHyperlaneで通信できる。しかし、AからCへメッセージを届けるには、途中のChain BでLayerZeroからHyperlaneへ引き継ぐ仕組みが必要になる。

個別に開発することは可能だが、両者を接続する共通の仕組みが標準で提供されているわけではない。

XIRとは何か

XIRは、中国科学院計算技術研究所などの研究者5名が提案した技術フレームワークだ。論文の初版は2026年9月に公開された。

既存の相互運用プロトコルを置き換えるのではなく、それぞれの通信経路を組み合わせる。

先ほどの例であれば、Chain BでLayerZeroからHyperlaneへメッセージを引き継ぎ、最終的にChain Cまで届ける。

その際、メッセージの内容だけでなく、途中でどのような検証が行われたかという履歴も引き継ぐ。

研究チームはLayerZeroとHyperlaneを組み合わせた試作システムを開発し、テスト環境で動作を検証した。現時点では研究段階にある。2

接続可能なチェーンはどこまで増えるのか

論文では、LayerZero、CCIPChainlinkのクロスチェーン相互運用プロトコル、Wormholeなど6つのプロトコルについて、2025年1〜10月に発生した約2,500万件のクロスチェーンイベントを分析している。

対象は286チェーン。

286チェーンから同じチェーン同士を除き、送信元と送信先を区別すると、考えられる組み合わせは81,510通りになる。例えば、Chain AからChain Bと、Chain BからChain Aは別々に数える。

このうち、データ上で直接接続が確認されたのは11,935通りで、全体の14.64%だった。

一方、既存の接続を複数組み合わせ、異なるプロトコルへの切り替えも認めると、理論上の到達可能性は96.86%になる。

これは実際の通信成功率ではなく、必要な中継機能が導入されていると仮定した場合の計算結果だ。

研究は、既存の接続を再利用することで、個別の接続設定を減らしながら到達可能なチェーンを増やせる可能性を示している。

そもそも、その接続は必要なのか

LayerZeroやCCIPChainlinkのクロスチェーン相互運用プロトコルは、すでに多くの主要チェーンに対応している。目的のチェーンへ直接通信できるなら、別のプロトコルを経由する必要はない。

複数のチェーンやプロトコルを経由すれば、コストや処理時間が増える可能性もある。

一方、単一のプロトコルでは対応できないチェーンへ通信したい場合や、多数のチェーンを接続する際の設定負担を減らしたい場合には役立つだろう。

ただ、そうした需要が実際にどの程度あるのかは分からない。

今回の研究が示したのは、主に技術的な到達可能性だ。接続できるチェーンが増えることと、そこへ通信したい需要があることは別の話になる。

LayerZeroやCCIPにとってはどうなのか

XIRのような仕組みが普及した場合、既存の相互運用プロトコルにも影響がありそうだ。

まず、LayerZeroやCCIPChainlinkのクロスチェーン相互運用プロトコルが利用される機会は増えるかもしれない。これまで単独では対応できなかった通信経路にも、他のプロトコルと組み合わせることで参加できるためだ。

一方、競争のあり方が変わる可能性もある。

現在、アプリケーション開発者はLayerZeroやCCIPChainlinkのクロスチェーン相互運用プロトコルなどを比較して採用するプロトコルを選んでいる。

しかし、XIRのような上位レイヤーが通信経路を選択するようになれば、アプリケーション側が個々のプロトコルを意識する必要は小さくなる。

その場合、LayerZeroやCCIPChainlinkのクロスチェーン相互運用プロトコルは開発者に直接選ばれるだけでなく、上位レイヤーに選ばれる立場にもなる。

また、プロトコル同士を接続できても、セキュリティの問題が解消されるわけではない。

LayerZeroのDVNLayerZeroでチェーン間メッセージの真正性を確認する検証者とCCIPChainlinkのクロスチェーン相互運用プロトコルのDONでは検証方式が異なる。複数のプロトコルを経由するなら、それぞれの検証が正しく機能する必要がある。

通信経路の選択肢が増える一方、検証や責任の所在は複雑になる可能性がある。

相互運用の相互運用の、その先は?

ブロックチェーン同士をつなぐためにLayerZeroやCCIPChainlinkのクロスチェーン相互運用プロトコルが登場した。

今度は、それらをつなぐXIRが提案された。

では、XIRのような仕組みが複数登場した場合、さらにそれらを接続するプロトコルが必要になるのだろうか。

この理屈を繰り返すと、相互運用のためのレイヤーが際限なく増えていくようにも思える。

ただし、必ずしもそうなるわけではない。

例えば、インターネットではTCP/IPなどの共通規格によって、異なるネットワーク間の通信が実現されている。新しいネットワークが登場するたびに、その上位に別の仲介ネットワークが必要になるわけではない。

ブロックチェーンでも共通規格が普及すれば、上位レイヤーを増やさずに接続する方法は考えられる。

もっとも、ブロックチェーンの場合は通信だけでなく、検証結果をどこまで信頼するかという問題があるため、インターネットと同じように標準化が進むとは限らない。

また、すべてのプロトコルを接続する必要があるのかも分からない。