TLに流れてきたVeilcoreというMidnight上のプロジェクトでは、植物の品種の由来やライセンスを、元の情報を公開せずに証明できるらしい1

そういえば今年、愛媛県が開発した高級柑橘「紅プリンセス」を称する苗木や果実が中国で販売されているとして問題になったことを思い出した。

紅プリンセス(愛媛果試第48号)は、「紅まどんな」と「甘平」を交配して愛媛県が開発し、2022年6月に品種登録された柑橘だ2。苗木の販売は県の許諾事業者に限られ、量販店での販売や県外への持ち出しは禁じられている。海外流出を防ぐため、中国や韓国でも品種登録を出願している。それでも今年、中国のサイトで紅プリンセスを称する苗木や果実が売られているのが見つかり、農林水産省が把握、情報提供を受けた県が実態把握を進めている3。厄介なのは、中国での品種登録がまだ完了しておらず、流出が確認されても差し止めが難しいことだ4

Veilcoreと何となく話がつながる気がしたので、少し調べてみた。

Veilcoreとは

Veilcoreは、Midnight上で、植物や動物の遺伝情報について、その来歴とライセンスを扱うプロジェクトだ。MidnightのBuild Clubから生まれ、今はテスト段階にある1。今の対象は大麻の品種だが、公式には「最初の対象であって、範囲ではない」としていて、記録の形式は分野を問わない。観賞用植物の系統でも、家畜の血統簿でも同じ仕組みが使えるという5

やろうとしていることはこうだ。品種には遺伝的な系統があり、育種家などの権利者が、その利用を生産者に許諾する。Veilcoreは、誰がその品種を作ったのか、いつの時点でその記録が存在したのか、誰に利用を許可したのか、という履歴を残す。

ここでMidnightを使う理由が効いてくる。「自分がこの品種を先に作った」と示すために、遺伝情報や育種の詳細をすべて公開してしまっては本末転倒だ。Veilcoreは元の情報そのものは出さず、ゼロ知識証明で必要な事実だけを証明する。ハッシュ化は手元のブラウザで行われ、記録されるのはコミットメントだけで、遺伝情報も契約条件も相手の情報も端末から出ない5

紅プリンセスにも使えるのか

今回の問題は、愛媛県が「紅プリンセスを作ったのは自分たちだ」と証明できずに困っているわけではない。県はむしろ厳しく管理してきた。それでも中国で類似の苗木が出てきた。

Veilcoreのような仕組みで、正規の苗木について「誰に渡したのか」「誰に栽培を認めたのか」「そこからの増殖を認めたのか」という履歴を残していけば、正規ルートは追いやすくなる。たとえば中国で見つかった苗木がDNA鑑定で本当に紅プリンセスだと確認されても、それにつながる正規のライセンス記録がなければ、どこかで正規ルートを外れた可能性が高いと分かる。

もちろん、それだけで誰が持ち出したのかまで特定できるわけではない。ただ、品種の中身は伏せたまま、何が正規で、どこまでが許諾されていたのかを後から検証できる状態にしておく。その一点で、今回の紅プリンセスの問題とVeilcoreの発想はつながっていると思う。